医師は静かにいなくなる

「働き方改革」をすすめる厚労省が、地方の現在の医療サービスを維持するため、2035年までの一時的な措置として、年2000時間(月166時間)の残業を許容する方向で検討しているという。ちなみに、過労死の基準は月80時間である。意味不明で、これは見過ごすことができない。医師にとっても、患者にとっても、じり貧となる危険が大きいと思う。

現状追認で「田舎に限って医者を酷使してもよい」という仕組みになれば、地方で働く医師は今まで以上に減るだろう。そうなれば、田舎に残された医師の仕事が増え、「田舎から逃げたもん勝ち」という悪循環に陥ってしまう。熱血モーレツ医師が奮起しても多勢に無勢、一時的なもので、当初の目的とは正反対の結果となるのではないか。

しかし、その割には医師たちは不気味なほど静かだ。

  • 唖然として開いた口がふさがらないからだろうか。
  • 医師にとって労働時間とは、知識や技術を高める修行だからだろうか。
  • 困った患者を救うという正義感に燃えているからだろうか。
  • それとも外来、当直(という名目の夜勤)、病棟と連続36時間勤務をこなしている医師たちは、もう時間の感覚も麻痺して、声を上げる考えもないのだろうか。
  • あるいは、今の医師労働環境を維持したいという病院管理者たちの思惑や、医師会のロビーイングがあるのだろうか。
  • 静かにフェードアウトしても、医師はほかの場所で食うには困らないからだろうか。

いずれにしても、田舎の勤務医たちがまとまって声を上げたり、有給をとって(?)ストを組んだりするのは、今のところあまり起こりそうな気配がない。

厚労省は、今日11日、専門家会議でこの案を検討する。ちょっと待ってくれと声を上げるなら、今だ。そして、一方の当事者の医師たちが静かなら、声を上げるのはあなたしかいない。医師がそっと田舎から逃げ出したあとで割を食うのは、ほかでもなく、そこで暮らし、病み、老い、死にゆく、あなただからだ。

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