13億人ロックダウン

5歳の誕生日にケトン食療法を自主退学した次女

ロックダウン4日目の夜明け
オーブンからパンの焼ける香ばしい匂いがする

在宅勤務1週間
ホームスクーリング3週間
家族みなふつふつと煮詰まる音がする

だがまだ3週間続く

異国の地
不安定な流通
公権力の暴力
東洋人への差別
脳性麻痺の娘
不安はいくらでもある

国外退避を命じられる外国人家庭が増えても
我が家に退避の選択肢はない
父は今が頑張りどきだし
妻子だけ日本に返しても生活は見通せず
ここでなんとかやっていくしかない

体はどこにも出かけられないが
心は自由だ

こんな中だからこそ
くだらないことで笑おう
こんな中だからこそ
家族で笑おう

半熟ファミリーチャンネルに登録すると毎週水曜あたりに、我が家のどうでもいい日常を動画に切り取って、おせっかいにお裾分けします。返歌上等。

妻のnote記事、それでも私は「つながり」を維持したいも暇つぶしにどうぞ。いやほんと、感染症対策、集中治療、保健システム強化とか医療的な側面ばかりが語られがちですけど、人類全体のwell-beingや幸福とのバランスはどうなってるんだ?という俯瞰した視点は常に大事だと思います。

公式翻訳が出ました!現地報告 ダイアモンドプリンセス号 のCOVID-19症例(国立感染症研究所)

公式版https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9410-covid-dp-01.html

2020年2月18日、国立感染症研究所はField Briefing: Diamond Princess COVID-19 Casesと題する報告書を発表しました。ダイヤモンドプリンセス号の検疫の実施状況流行曲線など、いままでの厚生労働省の公式発表にはなかったと思われる多くの一次情報が含まれており、本日以降、乗客乗員の下船が始まるにあたり非常に重要です。この報告書は2月19日午後2時(日本時間)の時点で日本語訳が提供がされていません。関係機関からの日本語での公式発表が早々にあるかと思いますが、それまでの間の参考に、個人的に非公式の仮翻訳を共有いたします。お気づきの点がありましたら、@zakojiまでおしらせください。

修正履歴

  • 最後の表のnは南澤潔先生のご指摘のとおり、正しくは40+111+34=185例だと思われます。感染研にもこっそり問い合わせしました。(2/19 19:00追記)
  • 感染研から公式翻訳が出ましたので、今後はそちらを参照ください。(2/19 23:30追記)
  • こちらの非公式・暫定訳は削除しました。(2/20 12:30)

ヨンオペ④ 一つかみの砂金

妻と長男が旅に出てから二週間になる。
あと7日でクリスマス。
妻も戻る、はずだ。

「一つかみの砂金」

父は暗いうちに起きてはパンを焼き
夜は絵本を読んでも寝落ちもせず
翌日の弁当とおやつの準備をし
仕事はほどほどにがんばり
ダイエットには目をつむっている

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ヨンオペ③ 週末

いよいよ終末、もとい週末。

我が家は通いのお手伝いさんも、住み込みのお手伝いさんも、ドライバーさんも、偶然みなさん(温度差はありながら)クリスチャンなので、土曜の午後からお休みをとってもらっている。12月は週末も滞在できると言ってくれていたが、お互いに週に一度くらいは家族水入らずな時間があったほうがいいと思うし、この週末はいよいよワンオペでやってみることに。

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ヨンオペ① 急がばまわれ

凛太郎、学校さぼって日本へレッツゴー

長男の凛太郎、くねくね、だらだらしていると思いきや、予告通り堂々とデリーの学校をさぼって日本に旅に出た。なんか各種の豆と小麦粉を背負って、出先でダルとチャパティを作ってふるまうらしい。なにそれ楽しそう。  続きを読む “ヨンオペ① 急がばまわれ”

医師は静かにいなくなる

「働き方改革」をすすめる厚労省が、地方の現在の医療サービスを維持するため、2035年までの一時的な措置として、年2000時間(月166時間)の残業を許容する方向で検討しているという。ちなみに、過労死の基準は月80時間である。意味不明で、これは見過ごすことができない。医師にとっても、患者にとっても、じり貧となる危険が大きいと思う。

現状追認で「田舎に限って医者を酷使してもよい」という仕組みになれば、地方で働く医師は今まで以上に減るだろう。そうなれば、田舎に残された医師の仕事が増え、「田舎から逃げたもん勝ち」という悪循環に陥ってしまう。熱血モーレツ医師が奮起しても多勢に無勢、一時的なもので、当初の目的とは正反対の結果となるのではないか。

しかし、その割には医師たちは不気味なほど静かだ。

  • 唖然として開いた口がふさがらないからだろうか。
  • 医師にとって労働時間とは、知識や技術を高める修行だからだろうか。
  • 困った患者を救うという正義感に燃えているからだろうか。
  • それとも外来、当直(という名目の夜勤)、病棟と連続36時間勤務をこなしている医師たちは、もう時間の感覚も麻痺して、声を上げる考えもないのだろうか。
  • あるいは、今の医師労働環境を維持したいという病院管理者たちの思惑や、医師会のロビーイングがあるのだろうか。
  • 静かにフェードアウトしても、医師はほかの場所で食うには困らないからだろうか。

いずれにしても、田舎の勤務医たちがまとまって声を上げたり、有給をとって(?)ストを組んだりするのは、今のところあまり起こりそうな気配がない。

厚労省は、今日11日、専門家会議でこの案を検討する。ちょっと待ってくれと声を上げるなら、今だ。そして、一方の当事者の医師たちが静かなら、声を上げるのはあなたしかいない。医師がそっと田舎から逃げ出したあとで割を食うのは、ほかでもなく、そこで暮らし、病み、老い、死にゆく、あなただからだ。

「テクノロジーは医療問題を解決できるか」がたしかにヤバかった話

話題の古市さんと落合さんの文春オンラインの対談を読んだ。「この問題は結構ヤバいな」とサブタイトルにあったが、なるほど確かにヤバかったので7ヤバい〜ポイントをシェア。編集者は故意なんですかね、きっと。

ヤバ1 終末期1ヶ月医療費の都市伝説を信じている

古市 財務省の友だちと、社会保障費について細かく検討したことがあるんだけど、別に高齢者の医療費を全部削る必要はないらしい。お金がかかっているのは終末期医療、特に最後の1カ月。

終末期、最後の一ヶ月の「延命治療」をやめれば社会保障費が劇的に減らせるというのは都市伝説に過ぎないと思う。ソースには言及されていないが、おそらくこのあたりか?

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0322-11a.pdf

「終末期医療費」を死亡前1ヶ月の医療費と定義した場合、一年間の終末期医療費は9000億円。でも、この年の社会保障給付費は91兆円、医療費に限っても29兆円。古市さんたちが言う「終末期医療費」を全部削っても、医療費の3%、社会保障給付費の1%を減らすに過ぎない。図に書き加えた青い棒くらいのものだ。

finalstagemedicalexpense

しかも、このデータは2007年とすでに周回遅れだし、実は蓋を開けてみると、分析対象の元データはなんと1990年と1991年の社会医療診療行為別調査である。平成が始まったばかり、30年前の話じゃないか。

たしかに、終末期にどのくらいの医療費がかかっているのかというのは、マクロの視点では重要な分析だ。そもそも「終末期」はいつからなのかとか、「死期は予測できるのか」とか課題は山積だと思うので、嫌味ではなく、ぜひ財務省のお友達に最新の分析をアップデートしていただきたい。そうでなく論拠を示さず都市伝説を吹聴するのはヤバ1。

ヤバ2 高齢者の治療差し控えは「大したことない話のはず」

古市 だから、高齢者に「10年早く死んでくれ」と言うわけじゃなくて、「最後の1カ月間の延命治療はやめませんか?」と提案すればいい。胃ろうを作ったり、ベッドでただ眠ったり、その1カ月は必要ないんじゃないですか、と。順番を追って説明すれば大したことない話のはずなんだけど、なかなか話が前に進まない。

これは感情的な余談だが、我が家の3歳になる子どもは脳性麻痺で寝たきりだ。まぁ一日中「ベッドでただ眠ったり」する時間が多いし、この3年半、一日5回のペースト食を毎回30分から1時間かけてどうにか嚥下してきたのも「必要なかったんじゃないですか」と後ろから鈍器で殴られた気分だ。

痰も出せないのでいつも呼吸は苦しそうで、担当医からは気管切開と胃ろうを勧められるが、もう少しやってみますと先延ばしにしているうちにニューデリーに流れ着いて棚上げとなっている。古市さん、この子に胃ろうを造るのははたして延命治療だろうか。「順番を追って説明すれば大したことない話」だろうか。話がそれた。

怒りでプルプルしてしまう(大げさな)のをぐっとこらえて、ぜひ一度お手並みを拝見と申し上げたい。今この瞬間も、きっとお二人の住む町の病院で、患者・家族と医療者たちがこのテーマと向き合っている。時間を割き、心を砕き、傷つけ傷つけられながら、だ。年齢や病気の種類で線引きなんてできるのだろうか。マクロの医療経済、社会保障費の課題と、目前の一人の人間の治療方針の選択とを、同じ土俵で語ることができるという想像力がヤバ2。

ヤバ3 命の沙汰も金次第

落合 終末期医療の延命治療を保険適用外にするとある程度効果が出るかもしれない。たとえば、災害時のトリアージで、黒いタグをつけられると治療してもらえないでしょう。それと同じように、あといくばくかで死んでしまうほど重度の段階になった人も同様に考える、治療をしてもらえない――というのはさすがに問題なので、コスト負担を上げればある程度解決するんじゃないか。延命治療をして欲しい人は自分でお金を払えばいいし、子供世代が延命を望むなら子供世代が払えばいい。今までもこういう議論はされてきましたよね。

古市自費で払えない人は、もう治療してもらえないっていうことだ。それ、論理的にはわかるんだけど、この国で実現できると思う?

落合 災害時に関してはもうご納得いただいているわけだから、国がそう決めてしまえば実現できそうな気もするけれど。そういったことも視野に入れないといけない程度に今、切羽つまっているのでは。今の政権は長期で強いしやれるとは思うけど。論理的には。」

お金のあるなしで受けられる医療に差がつくのは、日本国憲法が保証する基本的人権の侵害だ。世界の国々が皆保険制度を整備し、お金のあるなしにかかわらず、すべての人が必要なときに医療受けられるようにしよう(Universal Health Coverage)という機運が高まる中で(日本政府は国連でその旗振り役ですよ)、真っ向から逆行することになる。もちろん、人口ボーナスのない高齢社会日本が抱える社会保障負担は世界最先端の難題だが、ここで命の沙汰も金次第に逆戻りするのが、お二人の明晰な頭脳が導く「最適解」なのだろうか。むしろそれこそチキンレースそのものなんじゃないか。そして、そもそも、「終末期」「延命治療」を国や医療者がどう決めるのか、ああおそろしやビックブラザー、1984。ヤバ3。

ヤバ4 医者って後期高齢者に対しては9割公務員?

古市 今の政権は社会保障費の削減にはあまり関心がないでしょ。あと、それを実現しようとすると、日本医師会が反対すると思う。日本医師会は最強のロビーイング団体とも言われている。頭が良くて、お金もあって、時間まである人たちの集まりだから。日本では医療費の7割、後期高齢者の医療費なんて9割は公的負担だよね。つまり医者って後期高齢者に対しては9割公務員。

まず、日本医師会が金儲け悪徳医師の巣窟で巨大な闇の組織みたいな安直なラベリングはどうなのか。日本医師会の会員数はせいぜい17万人(日本の医師の6割程度、私も会員ではない)、選挙でそんなに影響力がある規模ではないし、政治献金を通じたロビーイングはあっても、それは医師会に限った話ではなく各産業界も同じ構図。それはともかく、後期高齢者の医療費の財源のうち、公費負担は47%だ。たしかに自己負担は(所得に応じて)1割または3割だし、現役世代の保険料からの支援金もあるが、だからと言って9割公費と言うのは悪意がありはしないか。医療費全体でみても公費負担は約4割だ。ヤバ4。000363221

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000363221.pdf

ヤバ5 在宅化で社会保障費カット?

落合 たしかに、そこが重要。高齢者の延命治療はある程度自費で払うことにして在宅化をすすめれば、社会保障費をカットしつつステークホルダーを納得させることができるんじゃないか。でも、現状を変える必要がないわけですよね。この問題は結構ヤバいな。どうするんだろう?
古市 もうどうにもならないんじゃないの?
落合 いやいや、どうにもならなくはないでしょう。考えないと。背に腹はかえられないとなれば――。

「在宅医療で社会保障費がカットできる」というのは本当だろうか。そもそも、在宅医療や地域包括ケアの本来の目的は患者や家族が希望する場所で療養できるよう、病院以外の選択肢を提供することで、医療費削減の道具ではない。自宅で療養するためには、医師や看護師、リハビリスタッフや薬剤師が頻繁に自宅に赴く必要もあるし、福祉の力を借りてヘルパーや配食、通所サービスなど生活支援も手厚く必要だ。全てに正当な対価が算定されているとはいえないのが現状だと思うが、少なくとも在宅医療にすれば即社会保障費カットという短絡的な構図にはない。サンプル数1の観察研究によると、私自身が信州の山村の診療所長をしていたとき、在宅患者が増えるほど、診療所の経営は安定したことは明記しておきたい。決して、在宅医療=治療差し控え=社会保障費カット、ではない。目的と手段と結果が混乱している。ヤバ5。

ヤバ6 高齢者が自分で吸痰?

古市 そこにも法律の壁があって、家族以外の第三者が高齢者の介護をするとき、痰の吸引をするためにも資格が必要で、すごく厳密に既存の法律が決めちゃってるじゃん。
落合 第三者が吸引をするのは法律の壁があるけど、自分で吸えるようになればいい。自分で痰を吸引するためのオープンソースの機械が出てくれば、医療や介護に必要なコストは下がると思うんですよ。一度それが開発されると、オープンソースの安いものが例えばAmazonで買えるようになってくる。

たしかに医療機器の開発手法には課題があるかもしれない。効率よく安価に医療機器の改善が進み、安全も担保される仕組みがあるのなら、それは夢があると思う。(吸引器の設計図があれば誰でも作れるのかといえばそれも疑問だが)ただ、吸引器は今だってAmazonで買えるのだ。しかも病院に出入りしている専門業者の半額くらいでだ。我が家も脳性麻痺の娘のために買ったが、障害者手帳や診断書を準備する手間を考えて、アマゾンでポチッとした。(アフィリエイトではありません)

https://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=カタカナ&url=search-alias%3Daps&field-keywords=吸引器

さらに疑問なのは、脳血管疾患や認知症や高齢による廃用で吸痰が必要な高齢者で、自分で痰を吸引できるという人がどれだけいるのかだ。想像してみたらすごくシュールな絵だ。現場感覚としては多く見積もっても1割以下だと思う。もう少し緻密な取材が必要だと思うし、それをしないのなら、せめて現場感覚がない「無知の知」という謙虚さが必要ではないか。ヤバ6。

ヤバ7 アルツハイマー型認知症の治療薬はできる?

古市 認知症を治すのはまだ当分先になりそうだね。アルツハイマー型認知症の治療薬はできると言われているけど、万能の特効薬は難しそう。
落合 しばらく治りはしないかもしれない。しかし、研究開発や治験も進んではいる。薬で治すだけでなく、認知症になってもITで普通に暮らすことができる、何とか頑張って、あと10年でそこに着地したいんですよね。

フランスで昨年、アルツハイマー型認知症の治療薬に費用対効果が認められないとして保険収載が取り消されたのは記憶に新しい。科学や医療の全能感がお花畑のように広がっていて素敵ですね。不老長寿や仙豆の開発も近そう、いでよ神龍!ヤバ7。

https://www.huffingtonpost.jp/mamoru-ichikawa/alzheimer-20180611_a_23455701/

総じて、落合さんは自分の専門外のことについては抑制的だが、古市さんが自由奔放なのがトンデモヤバかったっす。お二人ともきっと悪意はなく、これからの日本の社会保障を心から心配しておられるのに違いないと思うのですが、「これを機会に国民的議論が広がれば」なんてお茶を濁すのははばかられる点が多かったので、大人げないですがドラゴンボールを集めてしまいました。事実誤認、ご指摘があればzakojiへご指導ください。合掌。

番外編:妻自慢

ショッピングは茨の道

ニューデリーに引っ越して一ヶ月、ほとんど初めて家族みんなで日用品の買い物にでかけた。妻がいつもうるさく(!)「野菜と果物はあそこの野菜屋さんが新鮮」「この酒屋のおじさんは目が座ってるけどいい人」「仕立て屋は◯◯さん」「文房具屋はあそこ」「牛乳とお肉は割高でも配達が安心」と事細かに買い物事情を説明するのを、私も子どもたちも「ふ~ん」と聞き流していた。

そしてみんなで楽しくファミリーショッピングのゆく道がこれである。娘を抱いた妻がズダ靴でずんずん進む道なき道、「新鮮」とか「腕がいい」とか以前に、まず他に報告することなかったのか。何でも揃うスーパーマーケットやコンビニがないインド。この数年で格段に便利になったというが、はっきり言って、妻(かーちゃん)すごくがんばってる!と家族みんなで感謝の念を深めた週末だった。

「インドでもバングラでもどこでもいいよ!」

国際保健のキャリアという文脈で、必ず出てくる家族「問題」。青年海外協力隊や国際NGOなどで、はたして6人家族を養えるかというと非現実的だと思う。お金「問題」である。貯蓄を切り崩したり、バイトをしたりという不安定さがつきまとう。その点、給与も福利厚生もきちんとしてもらえるJPO制度はありがたい。家族連れのほうが扶養手当や教育手当などが雇い主側の負担になる分、JPO後の残留は不利かもしれないが、それはJPOに限ったことではない。JPO制度を利用する立場としては「家族連れでもJPO」というより、「家族連れこそJPO」なんじゃないかと思う。

お金の問題はそれで目処が立つとして、開発途上国に家族を連れて行くかどうかという次の「問題」がある。もちろん核家族で4人子供のいる我が家に単身赴任の選択肢はない。JPO受験から3ヶ月後、二次試験の合格通知には「バングラデシュ国事務所に推薦」とあった。その前年に多くの外国人が犠牲となったテロが起こったばかりのバングラデシュ。外務省に試されている、と思った。職場からすぐに妻に電話だ。

私「合格したけど赴任地がバングラデシュなんだ。」
妻「おめでとう。わかった。図書館行ってみる。」

二つ返事である。「図書館にはバングラデシュの本はなかった」ので、翌日アマゾンでバングラデシュ関連書籍が自宅に届いた。その後、理由は不明だが任地がニューデリーの地域事務所に変更になった。また大都会である。すぐに妻に電話だ。

私「よくわからないけど、任地がインドになりそうなんだ。」
妻「はーい。」
私「デンマークとかスイスとかに変えてもらうこともできるみたいだけど・・・」
妻「なんかインドのほうが楽しそう!バングラでもインドでもどこでもいいよ!いまTSURUYAで夕飯の買い物してて忙しいからまたあとで!」

買い物のほうがよっぽど重大のようだった。こうしてニューデリー赴任が決定した。

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15個のダンボールと7人の手下(助っ人二人を含む)を先導する妻

突き進む力

3人目の子供は脳性麻痺で、三歳になっても首がすわらず一人では座ることもできない、寝たきりである。その子が通う学校を妻が見つけてきてくれた。家族面談があるというので、(人生で)はじめて有給休暇をもらって妻についていくことにした。

まず、当たり前だが、この学校に外国人はいない(と思う)。上の子供が通う小学校は38カ国だかなんだか、とにかく人種と文化のるつぼである。下の子供が通いだした保育園も外国人がぱらぱらいる。しかし、特殊学校にいるのは、全員インド人の母ちゃんと子どもたちである。主に自閉症の子供が療育支援や職業訓練を受けていて、その中に脳性麻痺の子供も混じっているという感じのようだ。自宅から車で10分という近さがよい。

人生初の(くどい)有休をとった理由の療育コーディネータとの面談も、人間味があって、思ったことをずばずは言い合い、お互いにいくらか譲歩しあい、共通の目標設定ができ、意味のあるものだった。こういう場がきちんと設定されているのは素晴らしいと思う。「リハビリ総合実施計画書」などの形式だけはきちんとしていて、実際の中身や連携はぶっちゃけどうなの?という日本とついつい比べてしまった。ケア計画を調整することに私たちが慣れたという側面もあるが、日本で二年かかったことが、ここでは一ヶ月だ。

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ゴムのワニからピンポン玉を受け止める娘

教室でご飯を食べた後、ゴムでできたワニのおもちゃにピンポン玉をはめ込んで飛ばすというゲーム(面白いのか?)を、クラスの他の子供たちは標的に向かってやるのだが、目が見えないうちの子供の番がくると、先生はおもむろに「これじゃ面白くないわよね」とワニをくるっと180度回転させ、ピンポン玉を娘の顔に向けてバンバン発射しはじめたのである。もちろん、超楽しんでいた。一人ひとりの子供の能力や特性にあわせて、先生たちが自律的に考えて接してくれているのがとてもよいと思った。

しかし、インドにきてまだ1ヶ月なのに、上の二人の子供を小学校に通わせ、一番下の子供を保育園に通わせ、障害児の特殊学校を見つけ、妻、まことにあっぱれという他ない。私がこの一ヶ月エアコンの効いた瀟洒なオフィスで成し遂げたことの100倍は意義深いと思う。頭が上がらない、ありがとう。

頼る力

もう一つは頼り上手ということだ。こちらに渡航するとき、妻の父が助っ人にきてくれた(我が家はいつも妻の実家に頼りきり)ほかにもうひとり、ほぼ初対面の女子大生も手伝いにきて二週間滞在して、生活の立ち上げを助けてくれた。その後、入れ替わり立ち替わり、ニューデリーの喧騒には似合わない若い女子が3人、入れ代わり立ち代わり、米、味噌などの補給物資を携えて数日ずつ我が家に滞在してくれた。これもどう考えても私の人徳ではない。

核家族で障害児を含む四人の子連れ、途上国の大都会、危険フラグ乱立なのだが、妻は「じゃぁ、だれか手伝ってくれる人探してみよう」とあっけらかんというのであった。そして、どう考えても私が頼んでも来てくれなかったであろう助っ人達が、次々に我が家に舞い降りたのである。困ったときに頼る力、この妻と結婚しなければ、私は一生「大丈夫です、自分でなんとかします」と虚勢を張っていたに違いない。

熊谷晋一郎さんがいう、「自立とは依存先を増やすこと」というのは、こういうことなのだろう。

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道なき道をゆくお買い物

「このごろちょっと疲れたかもしれない」とふとこぼす妻。そりゃぁもっともですよ。掃除は昨日我が家に来た5人目の子ども(ルンバちゃん)に任せて、いつの日か美味しいハイティーでも飲みに行きましょう。

妻よ、これからもついていきますので、ずんずん進んでください。