13億人ロックダウン

5歳の誕生日にケトン食療法を自主退学した次女

ロックダウン4日目の夜明け
オーブンからパンの焼ける香ばしい匂いがする

在宅勤務1週間
ホームスクーリング3週間
家族みなふつふつと煮詰まる音がする

だがまだ3週間続く

異国の地
不安定な流通
公権力の暴力
東洋人への差別
脳性麻痺の娘
不安はいくらでもある

国外退避を命じられる外国人家庭が増えても
我が家に退避の選択肢はない
父は今が頑張りどきだし
妻子だけ日本に返しても生活は見通せず
ここでなんとかやっていくしかない

体はどこにも出かけられないが
心は自由だ

こんな中だからこそ
くだらないことで笑おう
こんな中だからこそ
家族で笑おう

半熟ファミリーチャンネルに登録すると毎週水曜あたりに、我が家のどうでもいい日常を動画に切り取って、おせっかいにお裾分けします。返歌上等。

妻のnote記事、それでも私は「つながり」を維持したいも暇つぶしにどうぞ。いやほんと、感染症対策、集中治療、保健システム強化とか医療的な側面ばかりが語られがちですけど、人類全体のwell-beingや幸福とのバランスはどうなってるんだ?という俯瞰した視点は常に大事だと思います。

医師は静かにいなくなる

「働き方改革」をすすめる厚労省が、地方の現在の医療サービスを維持するため、2035年までの一時的な措置として、年2000時間(月166時間)の残業を許容する方向で検討しているという。ちなみに、過労死の基準は月80時間である。意味不明で、これは見過ごすことができない。医師にとっても、患者にとっても、じり貧となる危険が大きいと思う。

現状追認で「田舎に限って医者を酷使してもよい」という仕組みになれば、地方で働く医師は今まで以上に減るだろう。そうなれば、田舎に残された医師の仕事が増え、「田舎から逃げたもん勝ち」という悪循環に陥ってしまう。熱血モーレツ医師が奮起しても多勢に無勢、一時的なもので、当初の目的とは正反対の結果となるのではないか。

しかし、その割には医師たちは不気味なほど静かだ。

  • 唖然として開いた口がふさがらないからだろうか。
  • 医師にとって労働時間とは、知識や技術を高める修行だからだろうか。
  • 困った患者を救うという正義感に燃えているからだろうか。
  • それとも外来、当直(という名目の夜勤)、病棟と連続36時間勤務をこなしている医師たちは、もう時間の感覚も麻痺して、声を上げる考えもないのだろうか。
  • あるいは、今の医師労働環境を維持したいという病院管理者たちの思惑や、医師会のロビーイングがあるのだろうか。
  • 静かにフェードアウトしても、医師はほかの場所で食うには困らないからだろうか。

いずれにしても、田舎の勤務医たちがまとまって声を上げたり、有給をとって(?)ストを組んだりするのは、今のところあまり起こりそうな気配がない。

厚労省は、今日11日、専門家会議でこの案を検討する。ちょっと待ってくれと声を上げるなら、今だ。そして、一方の当事者の医師たちが静かなら、声を上げるのはあなたしかいない。医師がそっと田舎から逃げ出したあとで割を食うのは、ほかでもなく、そこで暮らし、病み、老い、死にゆく、あなただからだ。

「テクノロジーは医療問題を解決できるか」がたしかにヤバかった話

話題の古市さんと落合さんの文春オンラインの対談を読んだ。「この問題は結構ヤバいな」とサブタイトルにあったが、なるほど確かにヤバかったので7ヤバい〜ポイントをシェア。編集者は故意なんですかね、きっと。

ヤバ1 終末期1ヶ月医療費の都市伝説を信じている

古市 財務省の友だちと、社会保障費について細かく検討したことがあるんだけど、別に高齢者の医療費を全部削る必要はないらしい。お金がかかっているのは終末期医療、特に最後の1カ月。

終末期、最後の一ヶ月の「延命治療」をやめれば社会保障費が劇的に減らせるというのは都市伝説に過ぎないと思う。ソースには言及されていないが、おそらくこのあたりか?

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0322-11a.pdf

「終末期医療費」を死亡前1ヶ月の医療費と定義した場合、一年間の終末期医療費は9000億円。でも、この年の社会保障給付費は91兆円、医療費に限っても29兆円。古市さんたちが言う「終末期医療費」を全部削っても、医療費の3%、社会保障給付費の1%を減らすに過ぎない。図に書き加えた青い棒くらいのものだ。

finalstagemedicalexpense

しかも、このデータは2007年とすでに周回遅れだし、実は蓋を開けてみると、分析対象の元データはなんと1990年と1991年の社会医療診療行為別調査である。平成が始まったばかり、30年前の話じゃないか。

たしかに、終末期にどのくらいの医療費がかかっているのかというのは、マクロの視点では重要な分析だ。そもそも「終末期」はいつからなのかとか、「死期は予測できるのか」とか課題は山積だと思うので、嫌味ではなく、ぜひ財務省のお友達に最新の分析をアップデートしていただきたい。そうでなく論拠を示さず都市伝説を吹聴するのはヤバ1。

ヤバ2 高齢者の治療差し控えは「大したことない話のはず」

古市 だから、高齢者に「10年早く死んでくれ」と言うわけじゃなくて、「最後の1カ月間の延命治療はやめませんか?」と提案すればいい。胃ろうを作ったり、ベッドでただ眠ったり、その1カ月は必要ないんじゃないですか、と。順番を追って説明すれば大したことない話のはずなんだけど、なかなか話が前に進まない。

これは感情的な余談だが、我が家の3歳になる子どもは脳性麻痺で寝たきりだ。まぁ一日中「ベッドでただ眠ったり」する時間が多いし、この3年半、一日5回のペースト食を毎回30分から1時間かけてどうにか嚥下してきたのも「必要なかったんじゃないですか」と後ろから鈍器で殴られた気分だ。

痰も出せないのでいつも呼吸は苦しそうで、担当医からは気管切開と胃ろうを勧められるが、もう少しやってみますと先延ばしにしているうちにニューデリーに流れ着いて棚上げとなっている。古市さん、この子に胃ろうを造るのははたして延命治療だろうか。「順番を追って説明すれば大したことない話」だろうか。話がそれた。

怒りでプルプルしてしまう(大げさな)のをぐっとこらえて、ぜひ一度お手並みを拝見と申し上げたい。今この瞬間も、きっとお二人の住む町の病院で、患者・家族と医療者たちがこのテーマと向き合っている。時間を割き、心を砕き、傷つけ傷つけられながら、だ。年齢や病気の種類で線引きなんてできるのだろうか。マクロの医療経済、社会保障費の課題と、目前の一人の人間の治療方針の選択とを、同じ土俵で語ることができるという想像力がヤバ2。

ヤバ3 命の沙汰も金次第

落合 終末期医療の延命治療を保険適用外にするとある程度効果が出るかもしれない。たとえば、災害時のトリアージで、黒いタグをつけられると治療してもらえないでしょう。それと同じように、あといくばくかで死んでしまうほど重度の段階になった人も同様に考える、治療をしてもらえない――というのはさすがに問題なので、コスト負担を上げればある程度解決するんじゃないか。延命治療をして欲しい人は自分でお金を払えばいいし、子供世代が延命を望むなら子供世代が払えばいい。今までもこういう議論はされてきましたよね。

古市自費で払えない人は、もう治療してもらえないっていうことだ。それ、論理的にはわかるんだけど、この国で実現できると思う?

落合 災害時に関してはもうご納得いただいているわけだから、国がそう決めてしまえば実現できそうな気もするけれど。そういったことも視野に入れないといけない程度に今、切羽つまっているのでは。今の政権は長期で強いしやれるとは思うけど。論理的には。」

お金のあるなしで受けられる医療に差がつくのは、日本国憲法が保証する基本的人権の侵害だ。世界の国々が皆保険制度を整備し、お金のあるなしにかかわらず、すべての人が必要なときに医療受けられるようにしよう(Universal Health Coverage)という機運が高まる中で(日本政府は国連でその旗振り役ですよ)、真っ向から逆行することになる。もちろん、人口ボーナスのない高齢社会日本が抱える社会保障負担は世界最先端の難題だが、ここで命の沙汰も金次第に逆戻りするのが、お二人の明晰な頭脳が導く「最適解」なのだろうか。むしろそれこそチキンレースそのものなんじゃないか。そして、そもそも、「終末期」「延命治療」を国や医療者がどう決めるのか、ああおそろしやビックブラザー、1984。ヤバ3。

ヤバ4 医者って後期高齢者に対しては9割公務員?

古市 今の政権は社会保障費の削減にはあまり関心がないでしょ。あと、それを実現しようとすると、日本医師会が反対すると思う。日本医師会は最強のロビーイング団体とも言われている。頭が良くて、お金もあって、時間まである人たちの集まりだから。日本では医療費の7割、後期高齢者の医療費なんて9割は公的負担だよね。つまり医者って後期高齢者に対しては9割公務員。

まず、日本医師会が金儲け悪徳医師の巣窟で巨大な闇の組織みたいな安直なラベリングはどうなのか。日本医師会の会員数はせいぜい17万人(日本の医師の6割程度、私も会員ではない)、選挙でそんなに影響力がある規模ではないし、政治献金を通じたロビーイングはあっても、それは医師会に限った話ではなく各産業界も同じ構図。それはともかく、後期高齢者の医療費の財源のうち、公費負担は47%だ。たしかに自己負担は(所得に応じて)1割または3割だし、現役世代の保険料からの支援金もあるが、だからと言って9割公費と言うのは悪意がありはしないか。医療費全体でみても公費負担は約4割だ。ヤバ4。000363221

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000363221.pdf

ヤバ5 在宅化で社会保障費カット?

落合 たしかに、そこが重要。高齢者の延命治療はある程度自費で払うことにして在宅化をすすめれば、社会保障費をカットしつつステークホルダーを納得させることができるんじゃないか。でも、現状を変える必要がないわけですよね。この問題は結構ヤバいな。どうするんだろう?
古市 もうどうにもならないんじゃないの?
落合 いやいや、どうにもならなくはないでしょう。考えないと。背に腹はかえられないとなれば――。

「在宅医療で社会保障費がカットできる」というのは本当だろうか。そもそも、在宅医療や地域包括ケアの本来の目的は患者や家族が希望する場所で療養できるよう、病院以外の選択肢を提供することで、医療費削減の道具ではない。自宅で療養するためには、医師や看護師、リハビリスタッフや薬剤師が頻繁に自宅に赴く必要もあるし、福祉の力を借りてヘルパーや配食、通所サービスなど生活支援も手厚く必要だ。全てに正当な対価が算定されているとはいえないのが現状だと思うが、少なくとも在宅医療にすれば即社会保障費カットという短絡的な構図にはない。サンプル数1の観察研究によると、私自身が信州の山村の診療所長をしていたとき、在宅患者が増えるほど、診療所の経営は安定したことは明記しておきたい。決して、在宅医療=治療差し控え=社会保障費カット、ではない。目的と手段と結果が混乱している。ヤバ5。

ヤバ6 高齢者が自分で吸痰?

古市 そこにも法律の壁があって、家族以外の第三者が高齢者の介護をするとき、痰の吸引をするためにも資格が必要で、すごく厳密に既存の法律が決めちゃってるじゃん。
落合 第三者が吸引をするのは法律の壁があるけど、自分で吸えるようになればいい。自分で痰を吸引するためのオープンソースの機械が出てくれば、医療や介護に必要なコストは下がると思うんですよ。一度それが開発されると、オープンソースの安いものが例えばAmazonで買えるようになってくる。

たしかに医療機器の開発手法には課題があるかもしれない。効率よく安価に医療機器の改善が進み、安全も担保される仕組みがあるのなら、それは夢があると思う。(吸引器の設計図があれば誰でも作れるのかといえばそれも疑問だが)ただ、吸引器は今だってAmazonで買えるのだ。しかも病院に出入りしている専門業者の半額くらいでだ。我が家も脳性麻痺の娘のために買ったが、障害者手帳や診断書を準備する手間を考えて、アマゾンでポチッとした。(アフィリエイトではありません)

https://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=カタカナ&url=search-alias%3Daps&field-keywords=吸引器

さらに疑問なのは、脳血管疾患や認知症や高齢による廃用で吸痰が必要な高齢者で、自分で痰を吸引できるという人がどれだけいるのかだ。想像してみたらすごくシュールな絵だ。現場感覚としては多く見積もっても1割以下だと思う。もう少し緻密な取材が必要だと思うし、それをしないのなら、せめて現場感覚がない「無知の知」という謙虚さが必要ではないか。ヤバ6。

ヤバ7 アルツハイマー型認知症の治療薬はできる?

古市 認知症を治すのはまだ当分先になりそうだね。アルツハイマー型認知症の治療薬はできると言われているけど、万能の特効薬は難しそう。
落合 しばらく治りはしないかもしれない。しかし、研究開発や治験も進んではいる。薬で治すだけでなく、認知症になってもITで普通に暮らすことができる、何とか頑張って、あと10年でそこに着地したいんですよね。

フランスで昨年、アルツハイマー型認知症の治療薬に費用対効果が認められないとして保険収載が取り消されたのは記憶に新しい。科学や医療の全能感がお花畑のように広がっていて素敵ですね。不老長寿や仙豆の開発も近そう、いでよ神龍!ヤバ7。

https://www.huffingtonpost.jp/mamoru-ichikawa/alzheimer-20180611_a_23455701/

総じて、落合さんは自分の専門外のことについては抑制的だが、古市さんが自由奔放なのがトンデモヤバかったっす。お二人ともきっと悪意はなく、これからの日本の社会保障を心から心配しておられるのに違いないと思うのですが、「これを機会に国民的議論が広がれば」なんてお茶を濁すのははばかられる点が多かったので、大人げないですがドラゴンボールを集めてしまいました。事実誤認、ご指摘があればzakojiへご指導ください。合掌。

バイキン部屋から届け!インフルエンザ3つの誤解

息子からインフルエンザをもらった父(職業:総合診療医)です。妻が(バイキンじゃなくてウイルスなのに)「バイキン部屋」と名付けた客間に丁重に隔離され、手持ち無沙汰なのでインフルエンザに関するよくある誤解をまとめます。インフルエンザ流行期に熱が出たら、医療機関をすぐに受診してタミフルやイナビルや風邪薬を貰わなきゃ!と思っている方に、ちょっと立ち止まってご一読いただければと思います。

ただし、これは私個人の意見ですので、所属施設の見解とは関係ありませんし、この記載であなたが不利益を被ったとしても責任をとることはできませんのでご容赦ください。

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どひゃー、ごめんなさい! やむをえず今日は臨時休診です。

結論

はじめにせっかちな方のために私の考えは次の通りです。

誤解1 タミフルが効く!
もともと元気な6〜65歳には抗ウイルス薬は不要
誤解2 熱が出たら必ず病院へ!
⇒⭕元気であなたが心配していないなら、受診は必須ではありません。

❌誤解3 病院の薬が効く!
市販薬も処方薬も風邪薬は症状を和らげるだけ

順に紐解いていきます。

誤解1 タミフルが効く!

私は(今回は)抗ウイルス薬(タミフル、イナビル、リレンザなど)を使いません。

2014年のコクランライブラリーのまとめ(*1)によれば、タミフルの効果は有症状期間を7日から6.3日に短縮することです。入院や重大な合併症を減らす効果はありません。自己申告の肺炎のリスクは1%減ったとされています(つまり、100人に処方すると一人の「自称」肺炎を防げる)が、胸部X線で診断された肺炎は減りませんでした。

要は、もともと持病の無い方にとっては、風邪症状を半日短くするために、1万円前後の医療費をかけて(初診料2820円とインフルエンザ検査料2910円と先発品2830円の薬剤費と薬局の調剤料1000円前後も)様々な副作用の危険(下痢は4%くらいにありますし、稀ながら劇症肝炎、急性腎障害、スティーブンス・ジョンソン症候群の報告もあります)を冒してまで「飲まなくてもいいんじゃない?」というのが個人的な考えです。

もちろん、重症化リスクの高い方は、医師の診察を受けて抗ウイルス薬を含む適切な治療を受ける必要があります。ちなみに、アメリカのCDCが重症化リスクが高いとするのは、次のような方たち(一部抜粋)です。あなたやあなたのご家族は当てはまりますか?

  • 入院が必要な重症例
  • 65歳以上、5歳未満(特に2歳未満)
  • もともと呼吸器疾患や心疾患、免疫不全などの持病がある方
  • 妊婦さんなど

ちなみに新しい吸入薬のイナビルに至っては、海外の第二相試験で偽薬(プラセボ)と比べて有症状期間の短縮を示せなかったため、日本国内でしか販売されていないクールジャパンレアな一品です。良い結果が出なかったので論文化されていないようですが(これが出版バイアスってやつかしらんもし論文を見つけたら教えてください)、アメリカの臨床試験データベースにはイナビルを2個(40mg、日本の使用量)吸っても、倍の4個(80mg)吸っても、一つも吸わなかったときと症状のある期間は同じ4日間でしたと赤裸々に登録されています。それ、聞き捨てならない!ですよ。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/results/NCT01793883?sect=X70156#outcome1

イナビルとタミフルと比べた試験で効果が劣っていない(非劣性試験)ことで日本では認可されましたが、釈然としないものが残ります。だって偽薬と同じだったイナビルが、タミフルに劣らないって・・・、じゃぁタミフルってなんだよ!と。薬のお値段もさらに上がって4280円。このあたりのもう少し突っ込んだ話は次の名古屋掖済会病院のまとめが秀逸ですので、医療関係者の方はぜひご一読ください。

ディープ・インフルエンザとER診療(名古屋掖済会病院)
http://www.nagoya-ekisaikaihosp.jp/?p=5781 (Web版、下のFacebook版の方が新しそうです)

効果と副作用と費用とを総合すると、抗インフルエンザウイルス薬はすべての人に必要な薬とはいい難いと思います。さらに、2018年5月には塩野義製薬から1回の内服で効果があるゾフルーザが発売になることが2月9日に報じられました。名前はフリーザみたいでかなり効きそうです。詳細はわかりませんが、これもやはり発売時点では日本でだけ承認されているクールな一品になる見込みですので、費用対効果についてちゃんと眉につばして向き合う必要があります。

タミフルが効く! ⇒もともと元気な6〜65歳には抗ウイルス薬は不要

誤解2 熱が出たら必ず病院へ!

ぐったりして心配な時、食事も取れない時、呼吸が苦労そうな時、そういうときは迷わずにすぐに病院を受診です。受診するかどうか迷うようなときも、せっかく世界でも類稀なフリーアクセス(好きな医療機関に好きな時にかかって良い)の皆保険制度がある日本なので、遠慮なく受診です。このあたりは下の一見対立する2つの議論が興味深いです。いずれも本質的には、病院に受診するべきかどうかをお上や他人がとやかく指図するな、という点では同じことをおっしゃっているのじゃないかと思いました。

  1. インフルエンザで「早めの受診」は間違いです!
    医療ガバナンス学会 坂根みち子さん
  2. ただの風邪? 親としての直感こそ大切に
    Huffington Post Japan 高山義浩さん

でも、インフルエンザ流行期に熱が出たら必ず病院を受診して診断してもらう必要があるかといえば、答えはNoです。流行している時期には医師はそもそもあまり検査を行わず、病歴(いつからどのように具合がわるくて、周りがどのような状況か)と身体所見(呼吸、血圧、脈拍、酸素飽和度、発熱、咽頭後壁のリンパ濾胞や呼吸音など)から他の重大な疾患を除外してインフルエンザを臨床診断します。そう、医師がインフルエンザですと言えば、診断はインフルエンザです。

そして重症化するリスクや希望に応じて「風邪薬」や「抗ウイルス薬」を処方します。リスクがなくて希望がなければどうするかって?もちろん、何も薬は処方せずに「心配なさそうですから、ゆっくり栄養と休養をとって、お大事に〜」と笑顔でお送りするのです。あえて言えば、私たちは安心を処方しているといえるのかもしれません。

ですから、熱は有るけど元気で、食事や水分もとれ、意識もはっきり、呼吸も落ち着いていて、あなたが特に不安を感じないのであれば、病院に受診してもあまり得られるものはありません。繰り返しますが、不安な時、辛い時、夜中でも休日でも受診してください。でも、さほど辛くないけど熱があってちょっとだるいからという理由だけで、苦労なさって病院においでになる必要はないと思います。ましてや、症状がないのに「念の為」「検査のため」受診しても、待合室で長時間過ごすうちに、病院でインフルエンザにかかるのがオチですのでナンセンスです。

学校や職場によっては「インフルエンザ治癒証明」を求められることがあるかもしれませんが、医師が診察室で行うのは、またしても問診と診察だけです。そのための患者さん、家族、医療者の手間と時間と費用をかけるほどのものではありません。もし症状が改善してきたら、学校保健法に定められたとおり「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで 」自宅療養して、登園・登校すればよいはずです。沖縄県のように県全体で治癒証明を取りやめる取り組みも出始めていますので、広がればよいと思います。

熱が出たら必ず病院へ! ⇒元気であなたが心配していないなら、受診は必須ではありません。

誤解3 病院の薬が効く!

インフルエンザの迅速検査が陽性であれ陰性であれ、熱とだるさと咳とくしゃみと喉の痛みはどうにかしたいのが人情です。せっかく苦労して病院までたどり着いて、長時間待たされたんだから、「市販の風邪薬が全然効かないから、スカッと効くやつ出してよ!」とおっしゃるお気持ちはもっともです。

・・・でも、大変残念ですが、そもそも世の中には風邪薬(根本治療薬)なんて(私が知る限り)ないのです。それは市販の薬でも、病院の処方薬でも同じこと。漢方については私は勉強不足でよくわかりませんし、もしご批判、反論があれば謹んで伺いますが、いわゆる「風邪薬」には咳止め、痰切り、鼻水止め、熱冷ましなどが調合されているものの、どれも症状を和らげる対症療法薬で、風邪の原因となる様々なウイルスに直接働きかけるものはありません。(まぁ、その数少ない例外がインフルエンザに対する抗ウイルス薬なわけです)

ですから苦労して受診した夜中の救急外来でもらう風邪薬が、薬局で買うパ◯ロンとか◯ルよりもよく効くかというと、あまり差はないはずです。もちろん、もともと病気がある方や他に飲み薬がある方は、しばしば飲み合わせの問題がありますので、処方を希望する場合には病院を受診したほうがよいでしょう。繰り返しになりますが、「風邪薬」は風邪を早く治す薬ではなく、風邪の症状を飲んでいる間だけ和らげる薬です。

病院の薬が効く! ⇒市販薬も処方薬も風邪薬は症状を和らげるだけ

あ、もちろん「肺炎にならないように、念のため抗生剤を出して」なんておっしゃらないでくださいね。

名称未設定
「南牧村診療所からこんにちは」より

ちなみに余談ですが、法律の決まりで医師は自分に薬を出すことが出来ません。じゃぁわざわざ薬局で風邪薬を買ったり、高価な◯山薬品や農◯の置き薬を飲んだり、あるいは病院を受診して風邪薬をもらうかというと・・・、私の答えは多くの場合Noです。

今回は症状も軽いし、たっぷりショウガをきかせた甘〜いチャイ(インドやネパールで飲まれているミルクティー)を飲んで、あとはしっかり休んで体が勝手にウイルスを追い出すのを待ちます。具合が悪い時に仕事や学校を無理せずに休める社会の仕組みのほうが、ずっと効く!ような気がしてなりません。国民医療費40兆円の時代に、限られた社会資源の使い方を冷静に考えるべきだと思います。

最後に

やや朦朧とする頭で雑然と書きなぐったので、不正確なところや言い過ぎのところもあるかもしれません。ご指摘は@zakojiで甘んじて受けます。また臨時休診でご迷惑をおかけしているみなさん、申し訳ありません〜。

先ほど息子二人(共にインフルエンザ野郎)と入浴していたら、娘が扉を開けて「やーい、バイキンメン」と冷たく言い放って消えました。明日はキミがドキンちゃんになっていないことを祈っています。

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佐久市平賀のmarucafe(*2)さんのチャイ・スパイスセットで、自宅で手軽に本格チャイが煮出せます。個人的に好きなだけで、リベートをもらっているとか、開示すべき利益相反はありません。

(*1) Jefferson T, Jones MA, Doshi P, Del Mar CB, Hama R, Thompson MJ, Spencer EA, Onakpoya IJ, Mahtani KR, Nunan D, Howick J, Heneghan CJ. Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in adults and children. Cochrane Database of Systematic Reviews2014, Issue 4. Art. No.: CD008965. DOI: 10.1002/14651858.CD008965.pub4.

(*2) marucafe http://maru-cafe.com