農村医学I・回答例

試験おつかれ様でした。回答例を掲載します。もし「こんな答えははどうですか?」「その回答は違うと思う!」というようなご質問やご意見がありましたら、コメントかメールでお知らせ下さい。

南牧村診療所・座光寺

問題と回答例

(1)二回目の講義にお呼びした市川八十吾さんによれば、戦後の南佐久地域では医師を呼ぶにはお金がかかるため、「医者を( あげ・家にあげ )るのは葬式の準備と一緒」と、芸者を家に呼ぶのと同じ言い回しで表現したという。(5点)

(2)こうした状況の中で多くの患者は病院にたどり着く頃には手遅れになって、救えるはずの命を失うことが続いた若月俊一らは、病院の職員はその力を5:3:2=入院:外来:(地域での活動(公衆衛生活動、検診、保健予防活動、文化活動など))の比率で配分すべきと主張した。(5点)
※いずれかの要素が含まれていればOK。ちなみに座光寺のTEDxTalkでは5が外来、3が入院と間違っているのはお気づきになりましたでしょうか。

(3)1961年のホワイトらの研究によると、ある1000人の地域を1ヶ月間観察すると、750人が何らかの体調不良を感じるが、そのうち医療機関を受診するのは250人程度にすぎないことがわかった。図の(    )に入る言葉を答えよ。(5点)
入院

病院に入院するということは、誰にとっても非日常的な出来事で、患者の生活のごく一部を切り取ったにすぎません。人の健康を決定づける様々な社会経済的背景(SDH: Social Determinants of Health)に配慮して、初めて病気ではなく人を診ることができると思います。

(4)以上の考え方は、後にWHOとUNICEFが1978年のアルマアタ宣言で「プライマリ・ヘルス・ケア」として定義したものと共通点が多い。では、プライマリ・ケアとプライマリ・ヘルス・ケアはどのような点で異なるのか。中学生にも分かるように平易な言葉で説明せよ。(5点)

例1)プライマリ・ケアは住民に与えられるものだが、プライマリ・ヘルス・ケアは住民自身が作り出すものである。
例2)プライマリ・ケアは医療に、プライマリ・ヘルス・ケアは保健・予防活動に軸足を置く。
例3)プライマリ・ケアはプライマリ・ヘルス・ケアの一部である。

プライマリ・ケアの定義

primary careとは、患者の抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスである。(米国科学アカデミーの医学部門による1996年の定義)

プライマリ・ヘルス・ケアの定義

Primary health care is essential health care based on practical, scientifically sound and socially acceptable methods and technology made universally accessible to individuals and families in the community through their full participation and at a cost that the community and country can afford to maintain at every stage of their development in the spirit of self-reliance and self-determination. (アルマ・アタ宣言 WHO 1978, Declaration: VI )

(5)現代では、住民の価値観が多様化し、個人主義やプライバシーを重視する考え方などから、集団で健康づくりをする従来のプライマリ・ヘルス・ケア活動が盛り上がりにくいとの指摘もある。こうした中で、あなたにできる、あなたがやりたいと思うプライマリ・ヘルス・ケア活動は何か。自由に発想してあなたの考えを教えて下さい。  (10点)

例1)村の診療所の玄関に自家野菜の直売所を作り、受診が無くても気軽に立ち寄れる診療所にする。普段から立ち寄っている場所なら、いざ困ったときにも相談しやすいはず。−−自己採点3点(住民ニーズ、地域資源、住民参加はある程度ありそうだが、結局のところ診療所における医療にとらわれており、住民自身が作り出す活動とはいえない)

皆さんの模範回答を期待しています!おこがましくも採点にあたっては、「自分だったら参加してみたいか」という視点と、プライマリ・ヘルス・ケアの4原則(住民のニーズに基づく方策、地域資源の有効活用、住民参加、他のセクターとの協調)にもとづいているかという点を重視して評価します。

マヒドン大学公衆衛生学部(MPH)留学メモ第4版

この情報は2011年3月から2012年5月までの留学時の情報に基づいています。最新情報の確認は各自の責任でお願いいたします。

入学まで

申込みの流れ

http://www.ph.mahidol.ac.th/Webpages_MPH/

こちらにある通りです。メールでの問い合わせの場合、gmailがはじかれることがあるので、返事がなければ他のアドレスから再送してみてください。

12月上旬 願書と必要書類を送付(推薦状2通はそれぞれ直接郵送してもらう)
1月中旬 合格通知がメールで到着
1月下旬 帯同家族のビザ申請書類が到着
2月上旬 航空券手配、ビザ申請
3月中旬 渡航

合格者の顔ぶれ−臨床経験・英語力

いわゆる入学試験はなく、書類が揃ってさえいれば、基本的には合格すると考えて良いと思います。二年間の職務経験が必須とありますが、初期臨床研修でも問題なく、同期の中には大卒でそのまま進学してきた学生もいました(特に医学部卒業後のポストが足りないミャンマーに多かったです)。厳密には入学要件を満たしていないため、学内の一部にはこれを問題視する向きもあります。

語学力については、入学後の学内共通試験(MU Test)で代用できます。同期の約1/3はMU Testで代用していました。私自身はTOEFL iBTを東京で受験して、スコアも大学に直接送付するようにしましたが、スコアの直接送付はかならずしも必要ではなく、スコアカードの写しを郵送すれば十分のようです。語学力による足切りはありません。

ビザ申請

詳細はタイ王国大使館のウェブサイトをまずは参照ください。
http://www.thaiembassy.jp/

特に注意が必要な点としては、家族を帯同する場合には大学と職場から追加書類が必要になることです。本人はNon-Immigrant ED、家族はNon-Immigrant Oビザです。

いずれもシングルエントリー(9000円、3ヶ月)で申請し、バンコクでさらに一年延長します。平日午前に東京九段下で本人申請し、翌日午後ゆうパックで発送してくれます。マルチプルは22000円とかなり割高ですし、2012年1月現在はスワンナプーム空港でも出国当日に申請可能になっているので、あえて日本で申請する必要はないと思われます。ただし、入国後の3ヶ月以内に確実にタイを出国することがわかっているのであれば、手間賃と保険料と考えて、あらかじめマルチプルで申請しても構わないと思います。なお、バンコクでマルチプルリエントリの申請費用は3800THB(9200円)です。

90日レポート、再入国許可、滞在期間延長(ビザ延長)

90日レポートは大学が代行してくれますので、時期になったらパスポートを預ければOKです。再入国許可は出国当日の空港でも取得できますが、有事に即座に出国出来る準備を整えておくという意味合いでは、やはり滞在延長手続きと同時に再入国許可を取得しておくのが安全だと思います。

滞在期間の延長手続きは、ドンムアン空港の近くにある合同庁舎で行い、本人出頭が必要です。大学がバンを出してくれるので、まとまって申請に行きます。スムーズに運んでも半日はかかる大仕事です。必要な書類は、パスポート、パスポートのコピー(前ページに署名)、写真、TM7、TM8、家族帯同の場合は戸籍記載事項証明(戸籍謄本を下に、在バンコク日本大使館に発行してもらう)などです。戸籍謄本は発行から6ヶ月以内であれば有効なので、予め取得して来泰時に持参するとよいでしょう。

海外旅行保険

保険は必須です。カード付帯だけではやはり治療救援費用がすずめの涙ですし、そもそも保険期間が長くて3ヶ月までなので、きちんとした長期の海外旅行保険に加入する必要があります。呼び方は駐在員保険や留学生保険などありますが、どれも中身は同じようです。私達が加入したのは損保ジャパンのファミリープランF20で、治療・救援費用3000万円、家族3人14ヶ月、保険料が50万円程度でした。契約にあたっては、知人の紹介で利用した金子秀人さんの事務所を通しました。途中で出産があり、中途解約や被保険者を追加して再契約など面倒な手続きをお願いしましたが、迅速に対応いただき安心感がありました。

金子秀人損害生命保険事務所
http://www.kaneko-sompo.jp/

損保ジャパンファミリープランF20
http://sompojapan.i-hoken.jp/family/price.html

バンコクでの出産

バンコクで出産する場合には、当地で新生児の健康保険に加入する必要がありますが、日本で加入する旅行保険に比べてかなり割高で、しかも出生後二週間は保証されません。言うまでもありませんが、日本で保険適用になるようなケースを含めて、バンコクでの出産費用はすべて自己負担です。新生児に何かあった場合もすべて自己負担です。

したがって、企業駐在などではなく個人でバンコクで出産する場合には、それなりの経済的リスクを背負う覚悟が必要です。また支払い能力がない場合には、母体や新生児を危険に晒す可能性があります。なお、帰国後に出産一時金や、健康保険の海外療養費を申請することは可能です。

私たちは当初はバンコクでの出産を予定していましたが、10月からのバンコク大洪水の影響で妊娠9ヶ月で一時帰国を余儀なくされ、そのまま日本で出産となりました。結果的には合併症もなくスムーズなお産でしたが、経済的にも医療的にも、やはり母国日本での出産は安心でした。

入学後の生活

住居

途上国出身の同級生は月4500-6000バーツくらいのRangnam ApartmentやVM Mansionに住んでいる人が大多数。いずれも大学から徒歩20分程度。バス通学が便利。大学周辺には月8000バーツくらいで小奇麗な物件が多数あり、単身の日本人はこのあたりが多いようです。独身であれば荷物も少ないので、当初はホテル泊で、こちらにきてからアパートを探すので十分です。

小さな子供がいたりすると場当たり的な対応はできないので、あらかじめ契約しておくと安心です。私はタクミホーム にお世話になりました。前年の9月に渡航して10カ所ほど物件を下見してイメージを掴んでおいて、1月になってからメールで空き物件を再確認し、室内の様子を写真で送ってもらって契約しました。日本人街(スクンビット39)のプール付き1LDK50平米で月20000バーツ程度からです。通学はBTSが20分程度。BTSの戦勝記念塔駅から大学までが徒歩10分程度。

お金

当座の資金は日本円の現金で持って入国するのが現実的です。市内の両替商(SuperRichなど)は銀行よりも数%レートが良いです。日本国内の資金はネットバンキングで自由に動かせるようにしておくことが絶対条件です。

こちらに来て一ヶ月程するとで授業料の支払いを求められますが、支払の方法は現金でも、振込でも、小切手でも大丈夫です。7500USDとありますが、タイバーツでの支払いでも可です。

タイの銀行口座は大学の入学許可証とビザがあれば30分ほどで開設できます。SCBを使っている人が多いですが、日本人にはKasikornのほうが対日本円のレートがいいので有利です。いずれもオンラインバンキングが便利に使え、振込も24時間対応です。家族用のキャッシュカードも発行できます。日本からの入金は諸般の事情でCitibankからUSDでKasikornに送金していましたが、USD経由なのでレート的には少しロスがあります。これも振込先口座を書面で登録しなくてはいけません。

ベストなのはロイズの海外送金サービスです。日本からしか利用登録ができないのですが、登録にはタイの銀行口座番号が必要というニワトリと卵の罠があります。渡航後に日本にいる家族に代理で手続きをしてもらうことを念頭に、事前に本人確認書類などの必要書類を日本の家族に渡しておくと首尾よくいくと思われます。(日本の銀行口座からロイズに国内振込すると、自動的に海外送金されるサービスです。手数料も安く、便利なようです。円建てでKasikornに入金するのがよいです。私はすでにこちらにきてからこのサービスを知ったので、登録の手間が面倒であきらめました。)

Citibank以外にも、新生銀行や大手の都市銀行などは、そのままタイでも現金を引き出せますが、これは両替レートも不透明ですし、それに加えて手数料が毎回150THBもかかってしまうので、利用価値はありません。タイの銀行のATM利用手数料は基本的に無料です。

携帯電話

SIMフリー端末があれば、こちらでSIMを買うだけです。日本の携帯電話も法改正後はSIMロックを外せるようになっているようですので、そういった端末であれば、日本で利用している端末をそのままバンコクでも使うことができると思われます。

私は日本ではiPhone3GSを使用していましたが、SIMロックが解除できなかったため、バンコクに来てからSIMフリーのiPhone4に買い換えました。それまで使っていたiPhone3GSはSIMロック解除ができないにもかかわらず、中古市場で10000THBで売却できました。

携帯電話の購入は、スーパーマーケット(BigC, Tesco Lotus)、非直営アップルストア(iStudio)、デパート(Central, Paragon, Emporium)のいずれでも大差ありませんが、新品を購入することを強く勧めます。私はiStudioで購入しました。

携帯電話の売却MBK(エンビーケー、マーブンクロンショッピングセンター)の携帯街が手軽でおすすめです。BTSの国立競技場駅直結で便利です。購入もできますが、中古が中心なので注意してください。

バンコクで新たに端末を購入する場合には日本語対応の観点から、iPhoneかAndroid端末を買うことになると思いますが、箱を開けた瞬間から日本語で使えるiPhoneのほうが万人向きだと思います。日本語にこだわらなければ800THB程度から安いGSM携帯が購入可能です。Androidで最安は2500THB程度から、Androidの上位機種で10000THB弱、iPhoneは20000THB程度です。中古市場で購入するのは、外国人にはリスクばかりでメリットはありません。

日本でもヤフーオークションなどで事前にSIMを購入しておけば、あらかじめ電話番号を伝えてから出国することが可能です。AIS、True、DTACが大手三社ですが、日本で例えるなら、順にNTT, au, Softbankといった感じでしょうか。AISの利用者が多く、3Gの無制限のデータプランが799THB/月です。都内で見通しが良いところなら、およそ1Mbps-5Mbps程度出ている印象で、テザリング(AndroidやiPhoneからWifiやBluetooth経由でデータ通信)も利用可能です。

マヒドンMPHの印象

◯よかったこと

  • アジア、アフリカ12カ国から多様な43人の同級生+15人のタイ人MPH学生とも共通授業あり(2012年度は今のところ1 Bangladesh, 2 India, 3 Japan, 1 Kuwait, 12 Myanmar, 7 Nepal, 7 Pakistan, 1 Somalia, 3 Sudanと伝え聞いています。)
  • 教室はわきあいあいとした雰囲気
  • 学生はMDのみならず、MBAやBSc,BNsなど多様
  • 学生は私以外の全員が途上国出身者。
  • 自国に戻ると教科書の中の出来事が目の前にある同級生からの学びが大きい。
  • キャンパスとフィールドが直結
  • ご存知のとおりタイは暮らすにはとってもいいところ。
  • 8割がたは何かしらの奨学金をもらっているようです

×悪かったこと

  • 講義、学生のクオリティーにはばらつきあり
  • 一部の出向組はやる気ないです(笑)
  • 独特のタイ訛りの英語には閉口
  • (自分も含めて)若く、臨床・実務経験が少ない学生が多い

Is the use of a personal health record associated with better health seeking behavior? 健康手帳は検診と関連するか

Such a pleasant surprise that I was given the Best Investigator’s Award in the international session at the 8th Annual Conference of the Japan Primary Care Association in Takamatsu on 13 and 14 May 2017. This honor is more than I deserve, but I am sure that the collective efforts of village health volunteers and public health nurses who contributed to the primary health care in Minamimaki, do deserve it. Summary in English follows.

先日高松で開かれたプライマリ・ケア連合学会の国際部門で、最優秀演題賞を受賞していたことが判明しました(遅っ)。診療所に赴任してとにかく驚いたのが、外来にうず高く積まれる健康手帳でした。手帳を持っている人とそうでない人との間には、何か違いがありそうだという疑問をまとめました。

私が賞をいただいたというよりも、この地域の医療の民主化、プライマリ・ヘルス・ケアの発展に尽力してきた、無数の健康推進員、地域住民、保健師さんたちの努力に対する賞だと思います。また、三頭の怪獣とともにワンオペで家をまもってくれた臨月の妻にも深く感謝します。演題にスペルミスwwwはご愛嬌。

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「私の健康手帳」の報告がプライマリ・ケア連合学会国際部門の最優秀演題賞を受賞

 

“Is the use of a personal health record associated with better health seeking behavior?”
Masahiro Zakoji, Honoo Ogihara, and Tomoko Kikuchi

[Objectives] The Elderly Health Handbook is a paper-based personal health record, which has widely been distributed throughout Japan under the Health Promoting Act since 1982. Little is known to date, however, whether it contributed to promoting health seeking behavior. This cross-sectional study aims to determine whether the use of the handbook is associated with such behavior.

[Methods] A total of 223 patientsʼ visit at Minamimaki village clinic in Nagano prefecture, between 20th July and 12th August 2016, were retrospectively reviewed whether they brought the handbook to the clinic, along with their basic characteristics such as age and sex. They were also reviewed if they underwent regular health checkups as a surrogate outcome of their health seeking behavior.

[Results] Among 223 patients, 135 (60.5%) were female and the mean age was 76.6 (77.9 for female, 74.6 for male). 146 (65.9%) brought the handbook and there was no significant difference between sex (66.7% for female, 64.8% for male, p=0.77). Out of 147 handbook holders, 102(69.3%) underwent regular health checkups while only 35(46.1%) out of 76 non- holders did so (P<0.001).

[Conclusions] It was suggested that those who brought the handbook were more likely to undergo regular health checkups, although it is not possible to conclude a causal relationship from this study design. In clinical settings, careful attention should be paid for their health maintenance status if the patient does not bring such personal health record.

Minamimaki10
PDF https://goo.gl/1pFyUq
ISSUU https://issuu.com/zakoji/docs/minamimaki10

「南牧のお宝手帳(診療所からこんにちは 2016年2月号)」

診療所にはこの一年間で50名ほどの実習や視察の来訪がありました。様々な視点から南牧の地域医療の取り組みについてご覧いただくと、皆さん口をそろえて「私の健康手帳」が印象深いとお話されます。

■患者が運ぶカルテ

「私の健康手帳」は、いわば患者さん本人が持ち歩けるカルテです。かつては開拓したばかりの無医地区を歩き回る保健師が、畑で血圧を測って手帳に書き込み、紹介状がわりに医者に通わせたといいます。四半世紀以上前からの診察や検診の結果が一冊にコンパクトにまとまっていることの重要性は、医療に携わる人なら誰もが大きく頷くところです。平時の血圧や脈拍がどうかということは、いざというときに異常を見抜く上で必須の情報だからです。

■電子カルテにも負けない手帳

電子カルテで一見便利な世の中になったようですが、ある患者さんの30年前の体重や血圧を調べようとすると、実は日本中のほとんどの病院がお手上げのはずです。カルテの保存期間は、医師法では5年と決められています。病院によってはより長く保存しているところもありますが、しばしば倉庫のダンボール箱の中ですから、内容を確認するのは至難の業です。
ところが、南牧村診療所においでくださる患者さんは、みなさん30年分のカルテを、軽々と片手に抱えて毎月受診くださいます。夏になって体重が急に減っても驚くことはありません。去年も、一昨年も同じだ、と手帳でわかるからです。

■デジタル時代の今こそ

そしてこの手帳が今なお、多くの方に大切に使われていることが、診療所の医師としては誇らしく、嬉しくてなりません。ある日の外来では外来患者さん全員が健康手帳をお持ちの日もあったくらいです。(写真1 外来にならぶ健康手帳)みなさんにとっては当たり前かもしれませんが、私は心底びっくりしました。外からおいでになる方たちも驚きと感動で強く印象に残るようです。

変哲のない紙の手帳ですが、電気がなくても、電波がなくても、いつでもどこでも、その患者さんの体と生活の歴史を教えてくれる健康手帳。そして、それが患者さんの手の中にあるのが、またいいですよね。東日本大震災では、停電のため医療機関の電子カルテが使えず、治療内容や処方がわからなくて右往左往する患者さんがたくさんおいででしたが、紙の手帳なら災害時にもきっと役立つに違いありません。

電子機器に囲まれた現代でも、いえ、だからこそ、その価値はますます大きいのかもしれません。ぜひ外来においでになるときには、「私の健康手帳」をお忘れなく。「私も一冊欲しい」という方の来院もお待ちしています!

佐久から世界に健康を: 座光寺正裕 at TEDxSaku on May 11th 2014

オーディションのプレゼンでは、普通に生活していたら馴染みがないような話題を、自分の体験談を交えて楽しくわかりやすく説明したり、他の方のプレゼン内容を受けたアドリプを入れて聞く人のココロを掴んだり… プレゼンの主題だけでなく、「伝え方」もとても魅力的だった座光寺正裕さん。

 1983年長野県生まれ、佐久在住歴11年。九州大学医学部卒、佐久総合病院の総合診療科医師です(地域医療、HIV診療)。佐久長聖中学校を卒業後、15歳でギャップイヤーを取りアジア各地を放浪した経験から、国際保健の道を志します。

 タイのマヒドン大学で公衆衛生を学び、帰国後2013年4月に院内の20人余りの仲間と国際保健委員会を立ち上げ、「だれでも気軽に国際保健に貢献できるプラットフォーム」を合い言葉に、病院をやめずに国際協力に参加できる「現職参加制度」の新設を実現。

 2013年11月の台風でフィリピン大学医学部のレイテ分校が全壊した際には、発災5日後に「レイテ分校友の会」を組織し、全国から寄せられた450万円の支援金で分校の早期再開を後押し。今後は人の交流を通じて、健康長寿の「長野モデル」を佐久から世界のへき地に届けるのが夢とのこと。

 …みなさん、お気付きですよね。珍しい名前ですもんね。そうです、TEDxSakuの代表、座光寺るいの旦那さんです。はっきり言って、代表の身内ということは、コネでも有利でもなんでもなく厳しいハンデでしかなかったと思います。やはり他の候補者よりどうしても厳しい目で見てしまいました。

 それでも座光寺さんは、外部審査員も交えた審議で満場一致で選ばれました。それだけのパワーがあることは、実際にプレゼンを見ていただければわかるはずです。

 国際保健委員会 https://www.facebook.com/SakuGlobalHealth

Junior Doctors Network and Global Health

Masahiro ZAKOJI
Chair, Global Health Committee, Saku Central Hospital, Nagano, Japan (zakoji@gmail.com).

Background

On behalf of the Japan Medical Association- Junior Doctors Network (JMA-JDN), it is a great pleasure and honor for me to write a few words for inclusion in the JMAJ. The JDN was offi- cially acknowledged in 2010 as a body of young doctors worldwide at the World Medical Asso- ciation (WMA) General Assembly in Vancouver. Since then, the network has expanded steadily and, in 2012, there were participants from eleven countries including Korea, Taiwan, Germany, Thailand, Singapore, Brazil, the United States of America, Canada, Spain, Israel and Sudan, at the JDN meeting, which was held along with the WMA General Assembly in Bangkok.1 In 2013, JDN was founded in Japan and officially accepted by the JMA as its subsidiary organiza- tion for junior doctors in Japan.

Establishment of JMA-JDN

The establishment of JMA-JDN has long been awaited since the foundation of the JDN world- wide in 2010. Finally in late 2012, candidate members for the JDN were appointed by the JMA Executive Board and members of the JMA Global Health Committee. Since our network was expected to represent “junior” doctors, those from post-graduate years 1 to 5 were eligible for enrollment. As of May 2013, 21 young doctors, aged between 25 and 39, from various training fields throughout Japan, including family medi- cine, obstetrics and gynecology, pediatrics, infec- tious diseases, and public health, have accepted the invitation.

Our first meeting took place on May 23rd 2013 in Tokyo, in conjunction with the JMA 4th Global Health Committee meeting. Although the meeting was held on a weekday, twelve JDN members made their way to the meeting from all over Japan, from Okinawa in the South to Hokkaido in the North, and celebrated the first day of the network establishment.

As a member of the newly organized JMA- JDN, I was privileged to accompany the Presi- dent of JMA, Dr. Yoshitake YOKOKURA, and Executive Board Member, Dr. Masami ISHII, to attend the 194th WMA council session in Bali, Indonesia, in April 2013 (Fig. 1). The wel- come speech was presented by the Indonesian Health Minister Dr. Nafsiah Mboi, who was an alumni of the Takemi Program in Interna- tional Health at the Harvard School of Public Health, named after Dr. Taro TAKEMI, the former president of JMA.

One of the main topics of discussion was over the final draft of the revision of the Declaration of Helsinki. It was somehow surreal for me that I was sitting around the same table where phy- sicians, lawyers, and other stakeholders were revising that declaration, to which I had paid the utmost respect and careful attention two years ago when I conducted health research on Chikungunya fever prophylaxes among plan- tation workers in Thailand. The discussion was well executed in a democratic and fair manner in that any delegate member was granted the opportunity to comment whenever necessary regardless of his or her affiliations.

Fig. 1 Japanese delegates to the 194th WMA council session in Bali, Indonesia, in April 2013 Left to right: Author, Dr. Yokokura, Prof. Kuroyanagi, Ms. Imamura, Mr. Noto and Dr. Ishii.
Fig. 1 Japanese delegates to the 194th WMA council session in Bali, Indonesia, in April 2013
Left to right: Author, Dr. Yokokura, Prof. Kuroyanagi, Ms. Imamura, Mr. Noto and Dr. Ishii.

Goals and Missions of JDN and JMA-JDN

JMA-JDN basically shares the goals and missions of the JDN world: “to provide a forum for experience-sharing, policy discussion, project and resource development on issues of interest to junior doctors, including (but not limited to) global health, postgraduate training, safe work- ing conditions, and physician migration.”2,3 Our members from various fields are enthusiastic to raise each specific objective, such as providing assistance for young foreign doctors willing to study in Japan, developing a training program on end-of-life care for medical students, and cul- tivating a better understanding among young doctors on JMA. Among those, I am committed to tackling global health issues through projects at my working place, Saku Central Hospital.

Saku Central Hospital Global Health Committee

I work for Saku Central Hospital in Nagano, a mountainous rural region in Japan. The former director of the hospital, Dr. Toshikazu WAKA- TSUKI, the 1976 Ramon Magsaysay Award winner for Community Leadership, is well known for his enthusiasm for primary health care.4 In the aftermath of the World War II, he started a mobile clinic along with health promoting activities through entertainment, that is, a short drama, focusing on health related issues such as the importance of water sanitation (Fig. 2). It should be noted that drama intervention in health promotion was put into practice in Saku region 30 years before the Declaration of Alma-Ata was adopted in 1978. He then started to provide an all-village annual health check-up in Yachiho village in 1959, which became a model for the nationwide health check-up system.

Fig. 2 A short drama “People in white coats” (1945) written by Dr. Wakatsuki Villagers enjoyed watching doctors and nurses act after a mobile clinic session.
Fig. 2 A short drama “People in white coats” (1945) written by Dr. Wakatsuki
Villagers enjoyed watching doctors and nurses act after a mobile clinic session.

We have provided training programs for 870 foreign medical professionals and governmental officials from 74 countries in the last decade (Fig. 3). In 2013, I was appointed chief of the newly organised Global Health Committee, which will provide young doctors, nurses, other staff, and people in the community, with the opportunity to contribute to the betterment of global health.5 With our inter-professional net- work in and out of the hospital, we are upgrading the quality of our training program for foreign visitors to meet their individual goals. We also provide comprehensive assistance for foreign patients in the Saku community, regardless of their solvency or legal permission to stay in Japan. We have assisted a few foreign AIDS patients, who were illegal over stayers without health insurance, to fly back to their home coun- try and continue their treatment.

In order to expand and strengthen the global health network, we will host the Saku Global Health Seminar in August 2013, focusing on what should be introduced to the world from our experiences of primary health care in rural communities in Japan.

Fig. 3 Foreign trainees and visitors to Saku Central Hospital
Fig. 3 Foreign trainees and visitors to Saku Central Hospital

JMA-JDN: Where to from here

Members of JMA-JDN started to analyze our own network by the SWOT method, that is strengths, weaknesses, opportunities, and threats, and will set our goals and missions soon by means of strategic planning. Since our members are scattered around Japan and engaged in full- time practices as young professionals, most of our interactions are inevitably online: drafted documents shared on a cloud server, daily com- munications through mailing lists, and monthly meetings over video conference services. The next JMA-JDN meeting in person will be held in November 2013 along with the 30th Anniversary of the Takemi Program in Tokyo.

We are determined to delegate to the Gen- eral Assembly of the Confederation of Medical Associations in Asia and Oceania (CMAAO) in New Delhi in September 2013, and the WMA General Assembly in Fortaleza in October 2013. We will also try to organize a JDN meeting in conjunction with the WMA council session in Tokyo in April 2014 to strengthen the JDN, especially in Asia.

References

  1. JDN News 1. Issue 1-2013, 4 February 2013. http://www.wma. net/en/80junior_doctors/40news/JDN_News-letter_Issue-1- 2013.pdf.
  2. Walker X, Loh L, Hornung T. Junior doctors network. World Medical Journal. 2012;58(3):119–120.
  3. World Medical Association, JDN, About us. http://www.wma.net/en/80junior_doctors/10about_us/.
  4. Saku Central Hospital. http://www.sakuhp.or.jp/ja/english/index.html.
  5. Saku Global Health Committee. http://www.facebook.com/SakuGlobalHealth.

世界の人々の健康に貢献したい

「世界の人々の健康に貢献したい」そんな気持ちで医療者を志した職員のみなさんを応援する仕組みが、佐久総合病院で使えるようになります。佐久病院の職員の身分のまま、青年海外協力隊などの国際協力活動に参加できる「現職参加制度」の採用が2月20日の管理者会議で承認されましたのでご報告致します。この制度を使って国際協力に参加する職員が名乗りを上げるのが楽しみです。

20140224第5号

PDFファイルはこちら

SGHS2013 第一回佐久国際保健セミナー

SGHS2013 第1回佐久国際保健セミナー
「いま世界に伝えたい、日本の地域医療の経験」

全国から集まった地域医療=国際保健の仲間たち
全国から集まった地域医療=国際保健の仲間たち

日 時:2013年8月3日(土)、4日(日)
場 所:佐久総合病院 農村保健研修センター
講 師:スマナ・バルア博士(WHO医務官)
中村安秀教授(大阪大学)ほか

詳細な報告は病院ウェブサイトへ http://www.sakuhp.or.jp/ja/1824/1826/001980.html

佐久市の農村保健研修センターで握手を交わす中村安秀・国際保健医療学会理事長と伊澤敏・佐久総合病院統括院長
佐久市の農村保健研修センターで握手を交わす中村安秀・国際保健医療学会理事長と伊澤敏・佐久総合病院統括院長

タイで携帯電話を買う

SIMフリー端末があれば、こちらでSIMを買うだけです。日本の携帯電話も法改正後はSIMロックを外せるようになっているようですので、そういった端末であれば、日本で利用している端末をそのままバンコクでも使うことができると思われます。

私は日本ではiPhone3GSを使用していましたが、SIMロックが解除できなかったため、バンコクに来てからSIMフリーのiPhone4に買い換えました。それまで使っていたiPhone3GSはSIMロック解除ができないにもかかわらず、中古市場で10000THBで売却できました。

携帯電話の購入は、スーパーマーケット(BigC, Tesco Lotus)、非直営アップルストア(iStudio)、デパート(Central, Paragon, Emporium)のいずれでも大差ありませんが、新品を購入することを強く勧めます。私はiStudioで購入しました。

携帯電話の売却はMBK(エンビーケー、マーブンクロンショッピングセンター)の携帯街が手軽でおすすめです。BTSの国立競技場駅直結で便利です。購入もできますが、中古が中心なので注意してください。

バンコクで新たに端末を購入する場合には日本語対応の観点から、iPhoneかAndroid端末を買うことになると思いますが、箱を開けた瞬間から日本語で使えるiPhoneのほうが万人向きだと思います。日本語にこだわらなければ800THB程度から安いGSM携帯が購入可能です。Androidで最安は2500THB程度から、Androidの上位機種で10000THB弱、iPhoneは20000THB程度です。中古市場で購入するのは、外国人にはリスクばかりでメリットはありません。

日本でもヤフーオークションなどで事前にSIMを購入しておけば、あらかじめ電話番号を伝えてから出国することが可能です。AIS、True、DTACが大手三社ですが、日本で例えるなら、順にNTT, AU, Softbankといった感じでしょうか。AISの利用者が多く、3Gの無制限のデータプランが799THB/月です。都内で見通しが良いところなら、およそ1Mbps-5Mbps程度出ている印象で、テザリング(AndroidやiPhoneからWifiやBluetooth経由でデータ通信)も利用可能です。

バンコクで出産を考えるなら

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 バンコクで出産する場合には、当地で新生児の健康保険に加入する必要がありますが、日本で加入する旅行保険に比べてかなり割高で、しかも出生後二週間は保証されません。言うまでもありませんが、日本で保険適用になるようなケースを含めて、バンコクでの出産費用はすべて自己負担です。新生児に何かあった場合もすべて自己負担です。したがって、企業駐在などではなく個人でバンコクで出産する場合には、それなりの経済的リスクを背負う覚悟が必要です。また支払い能力がない場合には、母体や新生児を危険に晒す可能性があります。なお、帰国後に出産一時金や、健康保険の海外療養費を申請することは可能です。

私たちは当初はバンコクでの出産を予定していましたが、10月からのバンコク大洪水の影響で妊娠9ヶ月で一時帰国を余儀なくされ、そのまま日本で出産となりました。結果的には合併症もなくスムーズなお産でしたが、経済的にも医療的にも、やはり母国日本での出産は安心でした。